無断欠勤を繰り返す社員を解雇したい|注意するべきポイントは?
無断欠勤を繰り返している社員を退職させたいという場合、解雇が直ちに適法となるわけではありません。
このページでは、社員を解雇するときに気を付けるべきポイントをご説明いたします。
■普通解雇と懲戒解雇
普通解雇と懲戒解雇は、社員を解雇するという点では共通しています。
しかし、懲戒解雇は社員に対する「罰」という側面を有する点で、普通解雇とは異なる配慮が必要になります。
■普通解雇の注意点
〇解雇の適法性
社員を不当解雇から守る法理として、解雇権濫用法理(労働契約法16条)があります。これは、使用者の方から一方的に労働契約を解消するためには、「客観的に合理的な理由」と、「社会通念上相当」と認められることを必要とする明文の法理です。このほかに、業務上の負傷・精神障害にり患した労働者や産前産後の労働者を対象とする解雇制限規定(労働基準法19条)などがあります。
繰り返される無断欠勤が、不当解雇と判断されないために注意するべき事項を列挙すると、以下の通りになります。
・欠勤の日数
裁判所は、欠勤日数がおおむね2週間をこえる場合に、解雇を正当と判断する傾向にあります。
・欠勤の理由
社員がやむを得ない理由や、会社の責めに帰するべき事由で無断欠勤を繰り返している場合には、不当解雇と判断される要素になります。例えば、突然の交通事故によって連絡ができない状況にあった場合や、業務上の原因によって精神障害にり患した場合、劣悪な職場環境に起因する欠勤の場合が考えられます。
・無断欠勤の前歴や社員の態度
正当な理由のない無断欠勤を行ったことが以前にもある場合、注意を促したにもかかわらず改心がみられない場合、今後注意を促しても改心が見込めない場合には、解雇が適法なものと判断される要素となりえます。
以上のことから、無断欠勤を繰り返す社員を解雇する際には、無断欠勤の日数と、その理由を調査する必要があります。
〇解雇日の設定
労働者を解雇する際には、少なくとも30日前にその予告をする(したがって、30日以上は労働契約を存続させる)か、30日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。
解雇通知書に解雇日を記載する際には、上記観点から解雇日を設定するよう注意する必要があります。
もっとも、労働者の責めに帰すべき事由による解雇の場合には、労働基準監督署の認定を受ければ、解雇予告の手続が除外されます。
2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じないような場合は、除外認定が認められるケースにあたります。
〇証拠を残すこと
訴訟に備え、証拠を残すことは重要といえます。
無断欠勤の事実については、出勤簿やタイムカードが証拠となりえます。
また、労働契約が終了していることを立証する証拠としては、解雇通知書の内容証明郵便が考えられます。
■懲戒解雇の注意点
上記に加え、適法に懲戒解雇をするためには、度重なる無断欠勤が懲戒事由にあたること・懲戒の内容として解雇が予定されていることが、就業規則に明記されている必要があります。
「2週間以上無断で欠勤を繰り返した場合」(懲戒事由)を懲戒事由として定めている場合、懲戒解雇が認められやすいといえます。
一方で、「3日以上無断で欠勤を繰り返した場合」と定めており、実際5日の無断欠勤があった場合、就業規則に定めはあるものの、違法とされる可能性が高いです。
すなわち、懲戒処分をするためには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」であることが必要になります(労働契約法15条)。これらの判断は、総合考慮によってなされますが、欠勤日数は重要な要素となります。
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太刀掛 祐一Yuichi Tachikake
大阪弁護士会(49930)
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経歴 |
神戸市出身 homestead high school 卒業 慶應義塾大学 法学部 卒業 神戸大学法科大学院 卒業 弁護士登録 |
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事務所概要
名称 | 美並・太刀掛法律事務所 |
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弁護士 | 太刀掛 祐一(たちかけ ゆういち) |
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