時効が迫っている売掛金|時効の成立を阻止する方法はある?
債権の消滅時効が完成すると、権利を失い、債権に基づく請求ができなくなります。
このページでは、売掛債権の消滅時効の完成を防ぐ方法をご紹介いたします。
売掛債権のような権利は、「債権者が権利を行使できることを知った時から5年」(民法166条1項1号)、「権利を行使することができる時から10年」(同条2号)で時効期間が完成します。時効の完成を阻止する手段として、改正民法では完成猶予と更新という2つの制度を設けています。完成猶予とは、ある事由が消滅するまで、あるいは消滅した後に一定期間が経過するまで時効期間が完成しないこととすることをいいます。更新とは、それまで進行してきた時効期間をなかったことにすることをいいます。
これらの効果を発生させるものとして、以下の方法があります。
■裁判上の請求等(147条)
裁判上の請求・支払督促(金銭などの給付を目的とする請求について、債権者の申立てによって裁判所書記官が発する支払い命令)・和解(訴え提起前に家庭裁判所に和解の申立てをして行う)・調停・破産手続参加(債務者について破産手続きが開始された際に、弁済を受けるために、自己の債権を裁判所に届け出ること)・再生手続参加・更生手続参加といった手続がとられている間は、その事由が終了するまで、時効期間の完成が猶予されます。
加えて、確定判決等によって、権利の存在が確定された場合には、時効期間が更新されます。
一方、権利が確定することなく上記事由が消滅した場合、その消滅の時から6か月間、時効の完成が猶予されます。
■強制執行等(148条)
強制執行・担保権の実行・形式的競売・財産開示手続(執行の対象となる債務者の財産を特定するために行う強制執行の準備手続)といった手続がとられている間は、その事由が消滅するまで時効期間の完成が猶予されます。
加えて、上記事由が消滅した場合、時効期間が更新されます。ただし、申立ての取下げや、法律の規定に従わないことによる取消しの場合は、時効期間の更新はされず、その事由の消滅時から6か月間、時効期間の完成が猶予されるにとどまります。
■仮差押え等(149条)
仮差押え・仮処分(将来における債権の実現を保全するために、債務者等の財産の現状を維持し、その処分を禁止する措置を講ずる手続)がなされると、手続終了から6か月間は時効の完成が猶予されます。
■催告(150条)
催告(義務の履行を求める意思の通知)の時から、6か月間は時効の完成が猶予されます。
なお、催告によって時効の完成が猶予されている間に再び催告を行ったとしても、時効の完成は猶予されないため、注意が必要です。
催告は、上記公的措置をとることなく、暫定的に時効の完成を阻止する制度です。催告の方法は口頭でも、電子メールでも構いませんが、証拠を残すという観点からは、内容証明郵便が有効といえます。
■協議を行う旨の合意(151条)
当事者が権利についての協議を行う旨の合意を「書面」で行った場合、その合意から1年間・1年より短い期間を定めた場合にはその期間・あるいは、一方が相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をしてから6か月の間、時効期間の完成が猶予されます。
上記完成猶予の期間は、完成猶予がなければ時効が完成すべき時から5年を超えない範囲で延ばすことができます。
なお、催告による時効期間の完成猶予中の上記合意による時効完成猶予・上記合意による時効完成猶予中の催告による時効期間の完成猶予はいずれも認められていません。
■承認〔152条〕
承認(義務者が権利者に対して、その権利の存在を認識している旨を表示すること)があると、時効期間は更新されます。
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太刀掛 祐一Yuichi Tachikake
大阪弁護士会(49930)
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神戸市出身 homestead high school 卒業 慶應義塾大学 法学部 卒業 神戸大学法科大学院 卒業 弁護士登録 |
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